【日曜日の連載シリーズ】
銀鯖道の夜
四
タマサキのうしろはゆるい丘になつて、
その黒い平らな頂上は、
ふたご座β星ポルツクスの下に、
ぼんやりふだんよりも低く連つて見えました。
「波へ乗る。」
ジロバンニがさう云はうとして、
少しのどがつまつたやうに思つたとき、
「ジロバンニ、ラツコの法王が來るよ。」
総料理長のオムレツを食べながらケントが叫びました。
「ジロバンニ、ラツコ法王が來るよ。」
ほかのみんなも續いて叫びました。
ジロバンニはまつ赤になつて、
歩いてゐるのかもよくわからず、
急いで行きすぎようとしましたら、
そのなかにシギパネルラさんが居たのです。
シギパネルラさんは氣の毒さうに、
だまつて少しわらつて、
怒らないだらうかといふやうにジロバンニの方を見てゐました。
そしてシギパネルラさんは、
高く口笛を吹いて、
向うにぼんやり見えてゐる沖の方へ歩いて行つてしまつたのでした。
ジロバンニはなんとも云へずさびしくなつて、
いきなり走り出しました。
すると耳に手をあてて、
わああと云ひながら片足でぴよんぴよん跳んでゐた小さな子供らは、
ジロバンニのことが面白くてかけるのだと思つて、
わあいと叫びました。
どんどんジロバンニは走りました。
母親や友人たちに、
総料理長直伝のオムレツを作り、
波乗りが大好きで、
優しく快活で、
礼儀正しくあいさつをするジロバンニ。
引用文は、
ジロバンニが夢で見ていることが描写されています。
夢のなかで親友のケントには、
「ラッコの法王がやって来るよ」
そう、
ラッコに似た顔の法王が来ると、
みんなから繰り返し聞かされるのである。
そして、
夢の中に登場したシギパネルラは、
気の毒そうに少し笑って、
沖に歩いていってしまったようだが、
ジロバンニに何かを伝えようとしているのだろう。
(5へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
このたびの能登半島地震により被害を受けられたみなさまに
心よりお見舞い申し上げます。
みなさまの安全と被災地の一日も早い復旧を願っております。
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